前提
この先のお話は予め脚本の気づきと自我の気づきと勇気の気づきと環境の気づきと悩みの気づきを読み終えておくと理解しやすくなります。
二重拘束とは
二重拘束とは、複数の拘束が矛盾し精神負荷になる状態を指します。
これをダブルバインドとも言います。
例えば、下記のような例があります。
- やる気がないなら帰れ
本当に帰る奴がいるか
- 意見が欲しい
そんな事は聞いてない
- 何でも訊いて
自分で考えろ
- 言われなくてもやれ
言われた事だけやれ
- どうして?
言い訳するな
- 丁寧に正確にして
早くしろ
- 無理するな
これ今日中にやっといて
- 好きな物を選んでいいよ
これにしなさい
- こっちにおいで
汚い手で触るな
- 痩せたい
食べたい
- 転職したい
変化が怖い
- 一人暮らしをしたい
収支が不安
- 何でも話して
そんな事を言うな
禁止令と利得
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禁止令が「〜すると不快になる」だとすると、利得は「〜しなければ不快にならない」です。
禁止令については脚本の気づきを参考にしてください。
利得とは、問題が抱えるメリットを指します。
人は問題を改善したいと思う一方で、現状維持で居れば楽という利得が欲しいとも思っています。
例を挙げましょう。先輩が後輩に「何でも訊いて」と言い、後輩は沢山の事を訊きに行きます。
しかし追々自分の時間を優先したくなった先輩は「自分で考えて」と拒絶します。
後輩は悩んでいるから訊いたのに、これでは傷ついてしまいます。
そのまま訊かないで居たら、ミスが起きた後から先輩が「何でも訊けと言っただろ」と怒ってしまいました。
訊いたら怒られる。訊かないと怒られる。
すると「訊いても訊かなくても傷つくなら先輩を頼らず信用しない」と考えてしまいます。
このように矛盾した指示を受けると、混乱して正解を見つけられずに、失敗を恐れ「止める事が利得」になる事もあります。
利得については下記のような例もあります。
- 異見を主張したい。でも受け入れれば攻撃されない。
- 自己否定を止めたい。でも叱咤すると頑張れる。
- 一人暮らししたい。でも実家だと親が助けてくれる。
- 結婚したい。でも自由でありたい。
- いい人をやめたい。でも嫌われたくない。
人間は無意識に快感原則に従い「不快を避け、快を得たがる」傾向があります。快感原則については自我の気づきを参考にしてください。
つまり欲しいもの物事や好きな物事には無意識に寄っていく一方で、危ない物事や嫌いな物事から無意識に離れます。
人間は感覚や感情に強く影響されてしまうのです。
例えば次のように考える事ができます。
意思 新しい挑戦をしたい
禁止令 挑戦すると面倒を感じたり失敗が怖くて不快になる
利得 挑戦しなければ不快を避けられるし、楽で快い
これを図にすると、このようになります。
そして感情優位な場合は快感原則に従い、無意識に快楽を選び挑戦を成せません。
成す為には勇気が必要になります。勇気については勇気の気づきを参考にしてください。
快楽原則と防衛機構は関係している
防衛機構は、恐怖を感じるとノルアドレナリンという神経伝達物質を脳から分泌し、生存率を上げるため回避か攻撃をします。
次の図のノルアドレナリンの部分です。ノルアドレナリンはセロトニンやドーパミンと関係あります。
前述の利得も不快を避ける快楽原則に従っているので、防衛機構と関係しているといえます。
防衛機構の例を挙げましょう。
たとえば、野生の虎と遭遇しても怖いと思わず近づいた場合や、不安定な高所で怖いと思わずズカズカと歩いた場合はどうなってしまうでしょうか。
恐怖を感じる事で防衛機構が働き、回避行動できるし、慎重に行動できるのです。
なお、ここでいう恐怖には生命の危険の他にも、時間やお金を失うリスクも含みます。
ただし防衛機構が働くと、利得を維持しながら、不快な感情や記憶だけを取り除こうと、不快な事を曲解したり、記憶をすり替えたり、八つ当たりしたりする場合もあります。
二重拘束で一貫性を失う
二重拘束していると、発言に矛盾や例外が増え、一貫性が低くなる傾向があります。
自分の平常心を確保する為に、人と争わずに関わろうと主張を控え、状況によって言う事を変えるのが処世術になるのです。
ある親子が、子供服を選ぶ例を挙げましょう。
親は「あなたが好きな服を選びなさい」と建前を言いつつ、親は心の中で「私も満足する服を選びなさい」と本音があり矛盾しています。
そして親は「この服にしなさい」と子へ強制し、建前と本音を矛盾させた二重拘束をしました。
すると子は「私はこれがいい」と選んだ服を、親の強制で「じゃあその服でいい」と混乱しつつ我慢する事になります。
親は建前と本音を使い分けているつもりでいて矛盾しており、子を二重拘束していることに気づきません。
親から二重拘束を受け、周囲の顔色を見ながら空気を読んで我慢してきた子は、親をはじめ周囲の顔色を見て言う事が変わるようになります。
そして、言う事が変わる事で自身も他人へ二重拘束するようになります。
さらに大人になった後も、自分が我慢してきた感情を、他人が表すと、嫌悪感を抱き、否定したり排除したり攻撃したりします。
怒るのを我慢している人が、怒っている人を見ると嫌悪感を抱くように。
挑戦を我慢してきた人が、挑戦している人を見ると足を引っ張ったり、貶したり、見て見ぬふりをするように。
ただし、二重拘束したり攻撃したりするのは、対象者を目下に見ている場合に多い傾向があります。
二重拘束は同時に解くと改善する
二重拘束のうち拘束を一方でも解けば改善する訳ではありません。
例えば、好きに主張できない人を例に挙げましょう。
禁止令は「主張するな」で、利得は「主張しなければ傷つかない」です。
仮に禁止令だけを解き、好きに主張を言えるようになったとしましょう。
苦手な相手に好き勝手な主張を言った結果自分が傷ついてしまったら、次も否定される事に怯え、また主張できなくなります。
つまり、主張できないから主張できるように、禁止令だけを解けば解決ではありません。
そのため二重拘束の拘束を、禁止令と利得の両方同時に解くと良いでしょう。
禁止令の解き方については脚本の気づきを参考にしてください。
利得の解き方についてはこの後を読み進めてください。
利得を解く
例えば、痩せられない人を例に挙げましょう。
禁止令は「食べるな」で、利得は「食べれば快楽を得る」です。
人は快楽原則に従って楽な方を選びがちなため、空腹の不快よりも、食べる快楽を選んでしまいます。
なぜ快楽を求めて過食してしまうのでしょうか。
そこで利得により得るものや避けられるものに注目し、利得による感情を考えましょう。それが利得を求める原因かもしれません。
ここでは、食事や快楽以外にも、過去から現在や未来の出来事にも視野を広げる必要があります。
利得によって避けたいものが「過去のトラウマ」だったり「今の労働環境の精神負荷」だったり「未来の自分に訪れそうな不安」だったりするのです。
利得を求める原因が分かれば、その原因を改善したり癒します。
なお、この利得を求める原因について、本人は無自覚だったりします。
人は、身を置く環境によって人格に影響します。環境については環境の気づきを参考にしてください。
例えば、豊かな家庭で落ち着いた親に愛される環境に身を置いていたなら精神的に安定した人になるでしょう。
例えば、貧しい家庭で罵倒しあう親に放置される環境に身を置いていたなら精神的に不安定な人になるでしょう。
環境で得た体験を記憶し、類似した場面に再開すると防衛機構が働くからです。
防衛機構を上書きする
この防衛機構を書き換えると根本的な原因を克服できます。
過去のトラウマが原因であれば、過去と現在と切り離して考え、過去のトラウマを癒し、現在には改善策を講じます。改善策の考え方については悩みの気づきを参考にしてください。
しばらくは再び利得を求める習慣が続くので、習慣が変わるまで、利得を求めた時は、癒しと改善策を一緒に連想します。
感情優位だと、無気力になったり、集中力が続かなかったり、気が散りやすくなったりするので感情へも配慮も重要です。
その場合は欠乏動機が原因かもしれません。
欠乏動機とは、自己否定感、低い自尊心、無価値感、罪悪感、疎外感、孤独感、絶望感、不信感、怒り、悲しみ、憎しみ、虚栄心、羞恥心など、認めたくない感情に起因する動機です。
欠乏動機が原因の場合、恐怖を感じると、やりたい事でも防衛機構が無意識に体を止めたり、回避したり、反抗したりして、やりたい事をやれない事があります。
なぜなら欠乏動機が原因の場合、やりたい事を成した後の状態が目的で、やりたい事は手段だからです。
理想で言えば、やりたい事の課題をやらずに、目的の状態だけ得たいのです。
その為、やりたい事の課題に対し、本音の「やりたくない」を無意識に表現します。
もしかしたら「頑張ってると思われる事で自尊心の低さを隠して安心感を得たい」「本当にやりたい事ではないので言い訳すればやらなくていい」「なぜやるのか理由を求めるようで、やらなくて良い理由を見つけて強調する」というようなパターンになっているかもしれません。
これではやろうとする程、やる気がなくなります。
欠乏動機が起因でも、認めたくない感情を認めて受け入れた上で、目的意識を質問しながら明確にして「何目的でやるのか」「どんな結果を得るためか」等を再認識すると、やる気を出すのに効果的でしょう。
やる気を引き出せたのなら、ドーパミンが優位なので「そしたらあれもできる」「これもできるといいね」といった動機付けが有効でしょう。
やる気を引き出せなかった場合は、セロトニンが優位なので「やめたくないなら」「悪い結果にならないようにするなら」「このままでいるなら」といった動機付けが有効でしょう。加えてノルアドレナリンが影響する「しなければ」「やらなければ」といった動機付けを組み合わせて「悪い結果にならないようにするなら、やらなければならない」といった行動促進が有効でしょう。セロトニンが優位な人の特徴として、睡眠時間が標準より長かったり、目覚まし時計のスヌーズ機能を頻繁に頼ってしまう傾向があるのではないかと、個人的に仮説を立てています。
改善の順序
ここまでの内容を順に纏めると、まず二重拘束に気付き、次いで禁止令と利得に気付きます。
そして利得から禁止令の順で解きます。
利得に気付いたり、行動を促す際に、嫌な感情や認めたくない自分を受け入れるのは不快な作業です。
これを認めるか排除するかによって、変われる人と変われない人の差が現れます。