騎士長ネコアクリスは正義感に強いネコでした。 そんなアクリスからフムフムは逃げています。 「だから待てって! とまれー!」 「その剣で切るつもりでしょ! 死にたくはないんだ!」 フムフムは止まりません。アクリスは追いかけてきます。 後方を見ないままフムフムは、スターチップ草を振り回しました。そこからでた星屑がアクリスの頬を偶然にもかすってしまいました。 (そんな……まさか当たっちゃうなんて!) 「お前今なにをした! やましいことがないんだろう!」 フムフムはその怒鳴り声にピクッと身体を硬直させて、立ち止まります。 おそるおそる振り替えると、そこにはやっぱり剣を持ったアクリスの姿がありました。 「だから僕はなにもしてないんだって」 フムフムはアクリスの頬から、少し血が垂れていることに気づきます。 「あ……大丈夫? ほっぺたのそれ……」 「お前のせいだろ」 アクリスは頭を下げたまま、微かに震えているように見えました。 武者震いかもしれない。 「ごめん……ごめんなさい」 アクリスは顔をあげると、頬の血を剣を持っている方の腕で拭いました。 フムフムはその仕草にビクッと震えました。 そして、アクリスはその腕をペロッと舐めます。 「痛いじゃないか……」ツイート――ビシュッ――。 アクリスはビシッと剣を振り払い、構えました。 それは今からフムフムを切りに来る気満々ということでした。 しかし、フムフムは恐怖で硬直したままで動けません。 なんとか振ったスターチップ草で星屑を飛ばします。 アクリスはそれをよけるために、フムフムに向かって前進しようとする動きが止まりました。 剣を武器にしているアクリスに対して、フムフムはスターチップ草という遠距離攻撃なので有利なのかもしれません。 ――シュッ――シュッ――シュッ――シュッ――。 スターチップ草を振り回し星屑を飛ばしまくりますが、避けられます。 「だから僕はしてないんだって!」 たまに当たってもかする程度で大きなダメージは受けていないようです。 アクリスは反射神経がよかったのです。 次々に避けられては、少しずつ近づいてきます。 「信用できるか! 盗人!」 アクリスはフムフムの懐まで入ってきました。スターチップ草を振ったら、スターチップ草が直接当たってしまいそうな距離です。 アクリスはそんなこともお構いなしに、振りかぶり飛びかかってきます。 フムフムは怖くて目を閉じます。 (僕は先に行かなきゃいけないんだ……こんなところで立ち止まるわけにはいかないんだ!) 「……あ、れ? あれ?」 フムフムは切られていませんでした。 アクリスの剣はフムフムの顔に当たる寸前で停止していたのです。 「怖がらせてすまない。証拠もないのに決めつけて悪かった」 フムフムはアクリスを見ました。 「必死な姿を見たら、疑いにくくなってきた」 アクリスは頭を下げ、剣を鞘に戻しているところでした。 急にアクリスは冷静になっていました。 「まだお前は未遂だ。何も持っていない。それを踏まえて聞きたい。盗みをするつもりだったのか?」 アクリスはフムフムの顔を覗き込みます。 「しないしない」 フムフムは首を横におもいっきり振り回しました。 「ただ、お星さまにちょっと触れてただけだから」 「そうか……」 アクリスは低い声で呟きました。 「悪かった……今回は見逃してやるが次はないぞ」 「僕の方こそ、その傷……」 フムフムはアクリスの傷を心配します。 「俺を誰だと思ってるんだ。騎士だぞ」 アクリスは背を向けると手を振って、去っていきました。 このまま戦いを続けていればフムフムは負けていたかもしれません。 (アクリスが話のわかるネコで本当によかった……) フムフムは胸を撫で下ろしました。
アニメ原画、ゲーム等のキャラクターデザインを経て、現在はフリーのイラストレーター・絵コンテマン。
ご縁があり小説版フムフムの挿し絵を担当させて頂くことになりました!
つやぷに(造語)した可愛いものが好きなので楽しいです💖
素敵な世界観が伝わるようにがんばります!
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